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2005 Le Jardin de Qahwah
抽出1。

珈琲が変化を起こす最後の行程、抽出。

珈琲の味は基本的にはベースとなる生豆の味と焙煎によって決まります。だからといって最後の行程の抽出を疎かにすると良い味は得られません。

たしかに酸化した古いコーヒーを抽出で蘇らすことはできません。(たとえ腕があっても)しかし、「良い珈琲」を「最高の珈琲」にすることが抽出にはできます。抽出方法は色々な方法がありますが、当店の抽出方法(ペーパードリップ)が味造りの参考になれば嬉しく思います。

其の壱【温度】
 沸騰したお湯をポットに移し替えます、この作業によりお湯の温度が約5℃〜10℃下がります。(当店推奨適温86℃・・・お湯の温度は高すぎると 豆の表面が焼けてしまいます、お湯のあら熱を取ってやるのが大事)

其の弐【珈琲粉のサイズ】
 中挽きのサイズを使用し、一人前約12グラムを目安にあとはお好みのさじ加減で。
(粉のメッシュは細かすぎると渋くなり、粗すぎると酸味が立ちます。ローストの深さでメッシュを変えるのが理想)

其の参【蒸らし】
 抽出の前に豆全体にゆっくりとお湯を注ぐ。豆にお湯がいき渡ったら約20秒時間を置く。この時にフィルターにお湯がかからないように注意する。
(珈琲部分のみに注湯。この時のお湯の量は粉の量と同じくらいに。お湯の量が多いと粉は蒸らされず、少ないと蒸れにムラがでます。)

其の四【抽出】
 蒸らしで盛り上がった豆の中央から円を描くようにお湯を細く注いでいく。(注湯の3湯目は2湯目よりも低く。高くするとペーパーによったシブが落ちてしまいます。)

其の伍【仕上げ】
 お湯を注いだ後、お湯を抽出しきらないのがポイント。(お湯を落としきるとアクまで落としてしまいます。)この基本はペーパードリップでもネルドリップでも変わりません。

さてさて、ここからが大事。ここからはちょっと上級編。抽出に入る前にまずは「乳化」について説明を・・・。

「乳化」とは単純に説明すると水と油を馴染ませる作業。スパゲッティーを作るときにパスタの茹で汁を入れるのは味をなじませると同時に油と茹で上がったスパゲッティーとを馴染ませる作用があります。その方法ですが、例えばペペロンチーノの場合、ニンニクでオイルを取った後に茹で汁を入れて弱火でフライパンを揺するようにすると最初は分離していた油と水がやがて馴染んできます。
「トロ〜」とした液体になれば乳化は成功です。

この作業は珈琲にも言えることで、珈琲の油は注ぐお湯にも反発します。(他の油に比べると水溶性ですが。)

・・・となると、豆の油とお湯とを乳化させれば珈琲の粉の中に隠されたエキスがそのまま落ちるのではないかと思い次の方法を思いつきました。

ペーパードリップの場合、上記「其の参」の時に次のことを実行すると味は「ぐんっ」と変わります。

其の参【蒸らし〜乳化ヴァージョン〜】
抽出の前に豆全体にゆっくりとお湯を注ぐ。豆にお湯がいき渡ったら、ドリッパーをゆっくりと回しながら約20秒時間を置く。

つまり、ドリッパー本体を回転させることで珈琲とお湯とを乳化させることが出来るのです。乳化してお湯をたっぷりと吸い込んだ豆は珈琲エキスをたっぷりと含んだ琥珀の結晶となります。そこにお湯を注ぎ入れれば自然珈琲エキスが流れてきます。お湯の注ぎ方ですが・・・。

其の四【抽出〜乳化ヴァージョン〜】
蒸らしで盛り上がった豆の中央に最初は細いお湯をゆっくりと注ぎ入れる。お湯の抽出スピードは落ちてくるエキスと同等のスピード、つまりは重力に任したスピードで。ある程度エキスが落ちたら円を描くようにお湯を細く注いでいく。

たっぷりとエキスを吸い込んだ液体は「ドロッ」とした液体。これが珈琲の「旨味」「香り」「コク」を含んだ最高の液体。後はエキスを残りの珈琲で割るだけ。
つまりは珈琲の抽出とは珈琲エキスをいかに抽出するかにすべてが掛かっていると言っても過言ではありません。

抽出に対する当店の基本は「珈琲エキス」の「珈琲割り」。お湯を珈琲の粉で濾すのではなく、お湯と重力を使って珈琲を抽出しなければ「良い珈琲」は味わえないと思っています。

抽出2。

今の抽出方法(「珈琲エキス」の「珈琲割り」のヒント)は珈琲業界の大先輩である福岡「珈琲美美」さんの抽出方法を参考に考えました。
ペーパードリップでの抽出は実はネルドリップの応用編です。

珈琲美美の森光さんは抽出法を次のようにも表現しています。

「水から沸き立て鎮めたお湯で、始め点滴、蒸らしが要。エキスを出したら、へそから「の」の字。泡蓋落とさず、濾せば美美。」

この抽出のアプローチは今の当店の珈琲抽出に大きな影響を受けました。この方法を私なりに解釈したのが以下のネルドリップ抽出方法です。

其の壱【温度】
 沸騰したお湯をポットに移し替え粗熱を取ります。

其の弐【珈琲粉のサイズ】
 中挽きより弱冠粗めのメッシュ。

其の参【蒸らし】
 抽出の前に豆全体にゆっくりとお湯を注ぐ。豆にお湯がいき渡ったら約15秒間蒸らす。この時にフィルターにお湯がかからないように注意、ドリッパーを軽く回転させ乳化をうながす。
(ミルにより蒸らし時間は異なります。)

其の四【抽出】
 蒸らしで盛り上がった豆の中央に細く一定の量の湯を注ぐ。湯の抽出量は落ちてくる液体と同量に、重力に任せて抽出。エキスが出たら円を描くようにお湯を「の」の字に細く注いでいく。

其の伍【仕上げ】
 お湯を注いだ後、泡層を残し、お湯を抽出しきらないのがポイント。

抽出3。

2003年の12月、吉祥寺の「もか」標 交紀さんにお話を伺うチャンスがありました。標さんは私の憧れの人です。故にかなりの緊張状態でしたが、とても優しく私のために2時間という貴重な時間を作っていただきました。大変感謝しています。

その時の話ですが、抽出の話をしてくださいました。普段、どの様に抽出してるかとの問いに、私は普段の抽出を話しました。
その時に一言、「何で蒸らすの?」と。

かなり衝撃の一言です。当たり前にやっていた事なので、まったく当たり前すぎた常識でした。そう、そのとおりです。明確な理由もなく蒸らしていた自分に気付かされました。(当時なりの蒸らしの解釈はありましたが。)

標さんは抽出では一切蒸らしません。ポットからのお湯を点滴で落としていく抽出方法で使用するコーヒー豆は1人分8〜13g。この方法で抽出される珈琲液は独特の香味とパンチを持った琥珀のエキスが抽出されます。

その時の私は蒸らしによって引き出される旨味は理解していたつもりでした。しかし、点滴による抽出での旨味は理解してなかったようです。

現在、「もか」は喫茶を閉めて豆売りのみとなってます。直接、標さんの点てた珈琲を飲んでみたかったのですが、かなわぬ今は自分で試すしかありません。点滴での旨味、蒸らしによるコク。珈琲エキス。この3点を結びつけて自分なりの解釈を見つけたとき、初めて自分の珈琲が表現できるのではと思いました。

現段階での私なりのネルドリップ抽出法です・・・

其の壱【温度】
 沸騰したお湯をポットに移し替え粗熱を取ります、この作業によりお湯の温度を約92℃に調整します。

其の弐【珈琲粉のサイズ】
 中挽きより弱冠粗めのメッシュで、一人前約18〜21グラム。

其の参【点滴蒸らし】
 ポットより点滴でお湯を珈琲に乗せていく。ここでのポイントは抽出速度。早くても遅くてもダメ。スピードは状況で珈琲に聞く。お湯を含み抽出された珈琲で次の層の珈琲を濾すイメージで。

其の四【抽出】
 盛り上がった豆の中央に細く一定の量の湯を注ぐ。湯の抽出量は落ちてくる液体と同量に、重力に任せて抽出。抽出液の色は徐々に薄まって行く。抽出液の色の変化と共に円を描くようにお湯を「の」の字に細く注いでいく。

其の伍【仕上げ】
 お湯を注いだ後、泡層を残し、お湯を抽出しきらない。

現段階ではこの方法が自分にとってのベスト。おそらく変化していくでしょうが、今はこの方法を極めていくつもりです。

スペシャルティーコーヒー。

今、業界で最も注目の分野です。一般にスペシャルティーコーヒーの認識としては「高品質」の証として認知しているようです。では、スペシャルティーコーヒーはいつから始まったのでしょうか?また、スペシャルティーコーヒーについて正しい理解がなされてるのでしょうか?

スペシャルティーコーヒーという言葉は1978年、米国クヌッセンコーヒーのクヌッセン女史がフランスの国際コーヒー会議で使用したのが始まりです。
そのコンセプトとして(Special geographicmicroclimates produce beans with unique flavorprofiles)=(特別な気象や地理的条件がユニークな香味を持つコーヒー豆を育てる)というものでした。

単純明快のこのコンセプトは80年代のアメリカの急激なコーヒー消費落ち込みの救世主となりました。
「スターバックス」です。スターバックスはヨーロッパの深入りのコーヒーを使用したエスプレッソという武器で瞬く間に人々に支持されていきました。その旗印が高品質の証「スペシャルティーコーヒー」でした。

その後、アメリカはたった10年でそれまでの「低品質コーヒー大国」から「高品質コーヒーの先駆」にまで成長しました。現在、アメリカにおける深入りのコーヒー市場は100億ドルです。

この背景にはコーヒー生産国の生産性向上のための品種改良が問題点です。
世界中のコーヒー生産国がおこなった生産性向上のための品種改良は必ずしも味覚面の品質向上とはならなかったということです。豆の見た目は良いのですが、見た目と味が釣り合っていない見かけ倒しのコーヒーが横行していたという事実があります。
そこで消費国の在来品種見直しの声が高まりました。

スペシャルティーコーヒーの定義は各国のスペシャルティーコーヒー協会に委ねられています。参考までにアメリカスペシャルティーコーヒー協会(コーヒーを消費する側の評価基準)の大まかな基準を挙げます。

1)豊かなフレグランス
(焙煎後のコーヒーの香り、挽いたときの香り)は あるか。

2)豊かなアロマ(抽出したコーヒー液の香り)はあるか。

3)豊かな酸味はあるか。(豊かな酸味は糖分と結合してコーヒー液の甘みを増加させる) 

4)豊かなコク(コーヒー液に濃度と重量感があるか)があるか。

5)豊かな後味はあるか。(飲んだ後、もしくは吐き出した後の風味をどう評価するか。)

6)豊かなフレーバー(口蓋でアロマと味わいを同時に感じることで香味を関知する)があるか。

7)バランスはとれているか。

また、生産国側におけるスペシャルティーコーヒーの評価基準ですが。

1)コーヒーの品種は何か。(アラビカの在来種、ティピカ、ブルボンが望ましい)

2)どんな栽培地で育てられるか。(栽培地、農園の標高、地形、気候、土壌、精製法が明確に特定されているか)

3)高水準の収穫、精製がおこなわれているか。完熟豆の比率を高め、欠点豆の混入を最小限にとどめているか

今までの豆の評価基準は外見上の見てくれ(スクリーン)や欠点豆の混入率で決められていた。ここに味覚状の評価を導入したところが鍵となります。

このようにスペシャルティーコーヒーの基準は高く、もちろん自然と水準が高くなるのは判ります。しかし、ここで危険なのは「スペシャルティーコーヒー」を使っていることに対する安心がすべてを満たしてしまうということです。

やはり、スペシャルティーコーヒーを扱う業者(個人自家焙煎店)のコーヒーに対する知識や腕、味覚がなければいくら良い豆でも生かされません。豆を選択する基準が単純に(高品質)=(高価格)で選んでしまうと危険ではないでしょうか?

・・・自分自身にとっての「スペシャル」な珈琲。私は店にある私の「スペシャル」を「スペリオール・コーヒー」と呼んでいます。