長らく中東の歴史やら珈琲の歴史やらを書いてきましたので、ちょっとブレイク。久しぶりにコラムのようなものを書きます。
地方(松山)での話なのかもしれませんが、個人事業者が元気がない気がします。商店街は昔から商いをしていたお店が次々と閉店。空き店舗が以前より目立ち始めたように思えます。代わりに大手コンビニが出店し始めました。かつて四国には無かったセブンイレブンが出店ラッシュで怒涛の進撃。「ウェルカム!」なムードもいまや「お腹いっぱいっ!」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そうなんです、空きテナントに個人事業者の参入が目立たないのです。個人っぽく見えても実はグループ会社だったり、背景に大手がついていたり。お店を出したくたくても出せない状況のようにも思えます。一昔前なら(出店する勇気と度胸)があれば個人での出店は可能だったように思えます。ちゃんとした段階を踏めば国金(国民生活金融公庫)もお金を貸してくれますしね。しかし、始めればなんとかなるという考えの時代はもう無いと考えなくてはいけないでしょう。勢いで商売を始めてしまった結果、何が待っているかというと「自営業ワーキングプワ」が手招きします。売り上げが支払いに、右から左へ。貯蓄が少し増えたかと思うと赤字と突然の出費でプラスマイナスゼロ。どうにか生活はできているけど、何かあったら店を畳まなくてはいけないという綱渡り。こんな状態に簡単に陥ってしまうのが今の時代です。
「じゃぁ、個人で店を持つのは夢なの?」と聞かれそうですが、答えは「夢なら止めたほうがいいです。早く醒めて下さい」ですね。自営業ワーキングプワに陥らないための第一歩として(夢ではなく目標に)と考えを切り替えたほうが良いと思います。フワリと漠然とした考えで始めてはいけません。目標にする事で店舗を構えるという離陸準備とオープンに向けての着陸目標へのフライトを始めるべきだと考えます。具体的な目標になったら、次は店舗を構える為の必要な金額に向けて、貯金を始めます。この貯金には当面の運転資金も含まれます。
(2015年5月)
貯金は毎月一定額を口座に預けるようにします。この通帳に一定額が毎月記入されているというのが重要になります。国金でお金を借りる場合、借りる金額の約三分の一の貯金が必要です。目標に向かってお金が貯まっているという足跡がお金を借りる信頼に繋がります。
個人店の最初は小さい規模から始めるのがいいかもしれません。こればかりは業種や考え方にもよりますが、自分の目と手が届く範囲で、自分だけでできる事からスタートするのが良いのではないでしょうか。この方法での急成長は望めませんが、安定した売り上げ確保をしたいならベターかと。手と目が届く範囲での商いは、全てが自己責任になります。全てを行う事で本当にしたい事、割り振りして手伝ってもらえそうな仕事が判り、手が足りなくなれば第三者に手伝ってもらう…そんなペースで、経費のかからないように始めるのがプアに陥らない方法の一つだと思います
。一ヶ月にかかる経費は一ヶ月で絶対稼がなくてはなりません。この絶対防衛ラインに攻め込まれると途端にプアへの道が顔を覗かせます。最低ラインとして絶対必要経費×1.5倍を目標に経営方針を決めた方が良いでしょう。もし事業が上手く行き、やっていける確信が持てたなら規模を大きくすれば良いと思います。「いやいや、最初から大きく始めた方がいいでしょう。規模はその規模の分売り上げるじゃないか」と言われてしまいそうですが、確かにその通りです。規模は大きい程大きな売り上げが見込めると私も考えています。最初から大きな土地や資金、背景、確信の持てる商品があるならばそれが良いと思います。私がここでお話する事業は、周りに独立した人が居なく、最小単位で自分の生きる道を決めた方にヒョットしたら参考になるかもしれない話を書いています。
では、1日にどのくらい利益を出していけば良いのか?
営業売上から見る利益目標の目安ですが、私が始める前は「3日営業日の売り上げ合計が家賃と同等」で利益が出ると教えてもらいました。これ、結構当たっていると思います。開店しようとする場所の家賃が高いか、安いか?業種によって大きく差がありますが、判断を見失わない冷静な基準になると思います。
(2015年6月)
それと見誤ってはいけないのが、家賃が高い理由、安い理由です。単純に坪当りの家賃で考えて「高い」「安い」を決めてはいけません。大通り一等地角だと当然家賃は高いです。何故か?その土地の前を行き交う人が圧倒的に多いためです。同じ場所でも1階と2階で差があるのはこの考え方の延長的なものです。(大型商業施設は除く)
そして家賃に関わる大切な事が営業時間。1日の目標金額から1時間あたりに幾ら売り上げなくてはいけないか?が算出されると思います。これを大切にしてください。売るものと売り方が自然に見えてくると思います。そこが見えれば自身の態度が決まります。つまりそれが自分の時給になります。これから算出して自分に月給を出すようにすれば完璧です。(自営業ワーキングプワ)に陥るパターンはこれらが崩壊しています。まず月給が出ていません。言い訳として「自分が好きな事をしているから給料は要らない」です。この言い訳は他の事(1日の営業売り上げ)(経費)(態度)にも当てはまります。結果として身を削り、貯蓄を崩す事になり、自転車操業火の車となる訳です。そして毎月経費を右から左へ廻し、給料の出ないワーキングプワの出来上がりという訳です。
さて、ここまでの話は経営学を指でなぞるようなお話を書いてきました。これらの事を踏まえて店舗を構えようとすると飲食店ならズバリ、ファミレスの様な店舗になります。コンビニやフランチャイズ展開している店舗なども大変参考になりますので、足繁く通いつめ、価格帯や接客、動線など参考にすれば良いと思います。
何のために店を始めるのか?この目的がお金の為なら、扱う商品で如何にお金を集める方法を極めていくか?その為の戦地や拠点を何処にするのか?どの様に人を動かすか?を考えていけば良いのです。「そうじゃないんだ!お金を集めるのが目的じゃない。伝えたい商品に共感していただきたい、喜んでもらいたい」という純粋な気持で店を始めたい方
は残念ですがそのままでは(自営業ワーキングプア)になりますので、その感覚の1/3をお金儲けに切り替えてください。店舗は続いてこそ意義があります。
(2015年7月)
首が回らなくなって敢え無く閉店してしまうという事は、応援してくださる方々を裏切った事になるのです。伝えたい事、売りたい物がハッキリしているなら場所は然程重要ではなくなると思います。インターネットで物販をするならば実店舗を持たず、マンションの一室でも可能です(但し、実店舗が無い場合、問屋が商品を下ろさないという場合があります)
インターネットがない時代でもファックスで注文受けていたのは数年前の話です。大切なのは「目的」と「手段」そして「目標」。それさえ決まっていれば場所や設備や経費は変えられます。「自営業ワーキングプア」への歪みの大半は此処と見栄から生まれるのです。店舗設備にしても初期投資で理想を揃える必要もないと思います。ヤッパリ必要だと感じれば徐々に買い揃えていけば良いのです。機械は消耗していき、壊れる時は何故か修理が重なります。それを分散するためでもありますが、購入時期に変化をつける事で咄嗟のことに対応できるというのもあります。
設備投資で大切な事がもう一つ。道具をより良くすることで結果、お客様に還元されていきます。その為にはお客様からいただいた売上を少しづつ貯めて(又は頭金にして)憧れの道具を買うというのは自身へのヤル気と喜びが半端ありません。当店でも私が10年間、思い焦がれていた道具を購入、設備投資出来た時の感動と覚悟は一生忘れないでしょう。最初から完璧だと途中で飽きちゃいます。
私は特に経営学を学んだ訳でもありませんし、貸借対照表を勉強する学校に行った訳でもありません。しかし、学べるものなら学んでおけばよかった知識だなと年を追うごとに強くなっています。「コーヒーが好きでもなかった私がそれに甘みを感じ、面白いと思った。この感動を一人でも多くの人に判ってもらいたい。」若かりし時の情熱だけで始めてしまった現在進行形型「自営業ワーキングプア」の私が言うのですから、結構正しいと思いますよ(笑)